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ロンドンの落書き10万件、過料はわずか77件
ロンドンの各区が記録した落書きは約10万件、過料は77件
2025年の1年間にロンドンの各区が記録した落書きは約10万件で、これに対して出された過料(fixed penalty notice)は77件だったと、英経済紙シティA.M.(City A.M.)が報じた。数字は英下院議員ニール・オブライエン氏(Neil O'Brien、ハーバラ・オードビー・ウィグストン選挙区)がロンドンの32区すべてに情報公開請求を行って集めたもので、30区が回答した。
記録件数が多かったのはどの区か
最も多かったのはハックニー区の1万3,613件である。ケンジントン・アンド・チェルシー区が7,235件、エンフィールド区が6,149件と続いた。最も少なかったのはレッドブリッジ区の244件だった。
オブライエン氏が各区に尋ねたのは二点だけである。落書きを何件記録したか、そして過料を何件出したか。前者が測っているのは除去作業の量だ。通報が入り、台帳に載り、消された壁の数である。何が描かれていたかは問うていないし、シティA.M.も種類別の内訳は伝えていない。タグ一つと壁一面の作品が同じ欄に入るということだ。
本当の論点は取り締まりの落差にある
ロンドン全体で2025年に出された過料は77件である。そのうち40件はサザーク区一つから出ており、ロンドン全体の半分を超える。21の区は一件も出していない。過料による収入は合計で1万ポンドをわずかに超える程度で、1件あたり平均およそ130ポンドにあたる。
約10万件の記録に対して過料が科されたのは0.08%程度である。オブライエン氏の主張が立脚しているのは落書きの総量ではなく、この比率だ。
区ごとの差は何を示し、何を示さないか
ハックニー区の1万3,613件とレッドブリッジ区の244件は55倍の開きがある。ただしこの数字が示すのは各区が記録した量である。ハックニー区に落書きが55倍多いのか、ハックニー区が55倍丁寧に記録しているのかは、この資料だけでは分けられない。情報公開請求は各区の記録基準を尋ねていないからだ。
議員の提案
ニール・オブライエン氏は、社会奉仕命令に無償労働を例外なく含めること、自宅で刑期を過ごす運用をやめること、そうして増えた時間を落書きやごみの清掃に振り向けることを主張している。また落書きを速やかに消すこと自体が抑止になるとも述べる。「落書きをなくすことが、秩序ある文明社会を取り戻すための私の第一歩になる」と書いている。
この記事は現職議員の主張であり、本人のSubstackに掲載されたものをシティA.M.が転載した。各区からの反論ではなく、シティA.M.も区側の見解は伝えていない。
この数字が古い論争を終わらせない理由
壁に描く行為が破壊行為なのか芸術なのかという問いに、除去統計は答えられない。除去統計が測っているのは除去だからである。依頼を受けて描かれた壁画と、望まれずに残されたタグは、法的にも社会的にも、壁の持ち主にとっても別のものだ。しかし清掃作業の台帳は両者を区別せず、情報公開請求も区別を求めなかった。
大都市のストリートアートを追う人にとって、これは実務的な問題である。壁に何があったかについての公的記録は、実際には何が消されたかの記録なのだ。誰が描いたのか、許可を得ていたのか、どれだけ残っていたのかは、現地に足を運んだ人が残す。
Wallscapeのマップとフィードが担うのはそこだ。区が数えた数字とは別に、壁に実際に何があるのかを写真と位置で記録しておく。
この先どうなるか
オブライエン氏の提案は主張であって政策ではない。落書きに過料を出す権限はロンドンのすべての区がすでに持っており、2025年にはその大半が使わなかったというのが今回の数字が示すところである。これが変わるかどうかは、新しい法律よりも各区の取り締まり方針次第だ。