グラフィティニュース
Network Fail壁画、バーミンガムの鉄道計画を風刺
Network Fail壁画は、バーミンガムの地域拠点が抱える取り壊しの懸念を、壁の上の出来事として表した作品だ。Birmingham Liveによると、作者不明のグラフィティアーティストが一晩のうちに制作した。場所はディグベス地区のアリソン・ストリートにあるザ・ウェアハウス(The Warehouse)。英国の鉄道インフラを担うネットワーク・レール(Network Rail)の作業員が、以前からある壁画を塗りつぶす姿が描かれている。
ザ・ウェアハウスにはカフェがあり、地域のイベントも開かれる。環境団体バーミンガム・フレンズ・オブ・ジ・アース(Birmingham Friends of the Earth)の活動拠点でもある。壁画を見る際には、会社名をもじった文字だけでなく、建物が地域で担う役割も手掛かりになる。外壁と建物の将来が、同じ画面で結び付けられているためだ。
Network Fail壁画は「消す行為」を風刺に使っている
作品の中心にあるのは、親しまれてきた図像を作業員が灰色で覆う場面だ。下地となったTree Lungは、アーティストのキャロライン・ルージュ(Caroline Rouge)が2013年に制作した壁画で、ザ・ウェアハウスの地域活動を象徴する存在になった。新作はその絵を覆うことで、建物そのものが失われる可能性を連想させる。
灰色の意味は、以前の壁画との関係から読み取れる。地域の活動を表してきた絵が覆われると、壁面の変化は場所の喪失を考えるきっかけにもなる。これは作品の構図に基づく解釈であり、建物の利用者が語った受け止め方とも重なる。
同団体の最高責任者カレン・リーチ(Karen Leach)は、最初に上塗りを見た際には強いショックを受けたという。しかし絵を見直した後、建物の置かれた状況を的確に表す風刺だと受け止めた。リーチは制作への関与を否定している。以前の絵への愛着と、新しい表現への共感が、一人の利用者の反応の中で交わっている点が印象的だ。
鉄道計画は地域の店や活動拠点にも影響し得る
背景にあるのは、ミッドランズ・レール・ハブ(Midlands Rail Hub)計画に伴うボーズリー高架橋(Bordesley Viaduct)の変更だ。Birmingham Liveは、独立系の事業者50以上が取り壊しや移転の影響を受ける可能性があると報じた。ルナ・スプリングス(Luna Springs)やママ・ルーズ(Mama Roux’s)も、影響が及び得る場所として挙げられている。
ザ・ウェアハウスも、計画が進めば取り壊される恐れがある。作品は起こり得る損失を目に見える形にしている。カフェを利用したり、イベントに参加したりする活動を思い浮かべると、外壁の変化が建物内部の用途にまでつながって見える。
ストリートアートとして注目できるのは、壁の所在地が作品の意味を支えている点だ。別の建物に同じ図像があっても、以前の壁画の記憶や、この建物の用途とのつながりは変わる。ザ・ウェアハウスでは、描かれた消去と現実の空間の将来が重なっている。
旧作の作者は新しい介入に賛同した
キャロライン・ルージュは新作を支持し、旧作を再現するための画像も送ったとリーチは説明している。チームがルージュに連絡を取った後の反応だという。上塗りされた以前の作品にも作者と制作の歴史があり、その作者が今回の表現をどう受け止めたかは、二つの壁画の関係を考える手掛かりになる。
リーチは、ネットワーク・レールの計画に反対する運動が成功すれば、Tree Lungを復元すると述べた。復元は運動の結果を条件とする意向だ。現在の風刺を受け入れることと、元の絵を戻したいという考えが、ここでは並行している。建物の将来を巡る活動に、壁画の今後も結び付けられている。
新作の作者は特定されていない。リーチはバンクシー(Banksy)の可能性に触れたが、Birmingham Liveが意見を求めた専門家は、その見方を否定した。鑑賞の出発点として確かなのは、描かれた場面と場所の関係だ。匿名の作品でも、旧作の記憶や地域の事情を踏まえれば、構図の狙いを具体的に読み取れる。
地域側と鉄道側はそれぞれの立場を示している
バーミンガム・フレンズ・オブ・ジ・アースは、ミッドランズ・レール・ハブ・アライアンス(Midlands Rail Hub Alliance)に代替案を提出した。リーチは案への自信を示す一方、欠点がある可能性も認め、報道時点では回答を得ていないと述べた。また、ウェスト・ミッドランズ市長リチャード・パーカー(Richard Parker)らに、計画への踏み込んだ検討を求めた。
ネットワーク・レールは、地元の懸念に注意深く耳を傾けていると回答した。同社が挙げた目標は、交通の接続改善、雇用や事業者の支援、バーミンガムの再生への貢献だ。パーカーも、必要な交通改善を確保すると同時に、地域の経済や共同体、アイデンティティーを支える事業者と文化施設を支援する考えを示した。
壁画はこうした対立の中で、地域側の危機感を視覚的に伝える。交通の改善を目指す立場と、既存の活動場所を守りたいという思いを併せて見ることで、外壁が議論の場になった理由が分かりやすくなる。作品の強い表現の周囲には、建物を使う人々と計画を進める側の異なる期待がある。
現地では外壁と建物を一緒に見ると構図が伝わる
観察の手掛かりは、Network Failの文字、作業員の姿、旧作を覆う灰色の関係だ。細部に近づいた写真は描写を伝えられるが、建物を含めた眺めは、この場所が風刺の舞台である理由を示しやすい。壁面だけで完結させず、地域の拠点に描かれていることを意識すると、作品の読み方が具体的になる。
カフェや地域イベントも、建物の用途として覚えておきたい要素だ。取り壊しの懸念は、絵を残せるかという問題に加え、活動の場所を維持できるかという問いにもつながる。他の作品を探す際には、ストリートアートの地図を探索の入口にできる。
訪問前には壁画の状態や利用条件を確認し、建物の活動を妨げずに観察したい。作品を見る位置を少し変え、外壁と建物を交互に眺めることも、図像と場所のつながりを考える助けになる。ザ・ウェアハウスの壁では、以前の図像の記憶、新しい風刺、地域の将来が、ひとつの場所で交差している。
出典: Birmingham Live